PNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)の
患者さんとご家族向けの疾患情報サイトです。

PNH治療プラス
相談シートに記録する
PNH治療プラス

患者さんが思ったことを言える時間に
~PNHの診療で相談シートを活用した事例について~

Interview

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は経過の長い慢性疾患です。患者さんは定期的な通院が必要ですが、自分の状態を正しく説明するなど診察時間を効果的に使えているかどうかは個人差があります。診察時間を患者さん及び医療者にとって有益なものにする可能性をもつのが、症状や治療の希望・日頃の悩みなどを記入する「相談シート」です。今回は相談シートの活用について、兵庫医科大学病院の池上明香 看護師にお話を伺いました。

「大丈夫」でも、患者さんは不調を抱えている

相談シートの活用について語る池上明香 看護師(兵庫医科大学病院)=院内撮影

相談シートの活用について語る池上明香 看護師(兵庫医科大学病院)=院内撮影

PNHに限らず、慢性疾患の患者さんと(主治医の)先生の外来でのやり取りはさらっとしたものになりがちです。特に病状が安定している場合は、患者さんが先生から調子を尋ねられて「大丈夫です」と短く返されるなどして終わるため、その傾向が強く見られます。一方、診察中に何か言いたそうでも結局何も伝えずにそのまま帰る患者さんを見かけたことがあります。

この光景が気になったため診察室を出た患者さんに話を聞いてみると、患者さんが先生とのコミュニケーションを控える理由がいくつか浮かびました。一つは、不調はありつつも患者さんにとってはいつものことなので「大丈夫です」と答えられる傾向があることです。このように答えられることについては、患者さんのコミュニケーション能力に問題があるわけではありません。日頃からしんどい状態に慣れてしまっているからこそ、自分の状態をどう説明してよいのか分からないのです。また、あくまでイメージにとどまりますが、患者さんは診察中の先生を煩わせるのを良しとせず、「経過が良く問題のない患者」と認識されたい印象を持ちました。あとは、自分の状態で少し気になることがあっても先生に打ち明けたところで症状がなくなるわけではない、治療で劇的に改善することはないのではないか、という諦めも感じました。

相談シートを活用しながら、症状を具体的に聞き出す

患者さんから症状を具体的に引き出すために、私は症状ごとに振り返りができて症状の程度も把握できるツール(PNHのウェブサイト(PNH治療プラス)の相談シート)を活用しています。そのときは、患者さんが答えやすいように「家事をしている時はどうですか」「仕事の時はどうですか」「友人やご家族と一緒に歩いていて息切れすることはありませんか」など、いつもより負担を感じる状況があるか、症状は日常生活に何か支障が出る程なのか質問します。そうすると、患者さんは症状を振り返ることができて「貧血が進んでいるときはやっぱり辛い」「(貧血が進んでないときは)しんどくても、仕事に支障は出ない」などと回答していただけます。

私が身体の状態について尋ねたとき、初めての患者さんは大抵「何でこの看護師さん、めっちゃ聞いてくるんだろう?」と警戒されています。診察時のように「特にないです」「変わりありません」と話されることもありますが、はじめに目的をしっかり伝え、こちらが積極的にぐいぐいリードする形でシチュエーションを掘り下げることで、患者さんも自分の状態を話してくださるようになっていきました。

やり取りしていて、例えば「家事の時しんどくないですか?」と尋ねた時に「そういえばこういう時もしんどいんだよね」と聞いたこと以上のものが返ってきた時に手ごたえを感じます。また、取り組んでいく中で、患者さんのフィードバックなり反応といったところは、(相手の)硬さが取れていったり機械的なものではなくなったりするなど経験を重ねるごとに良くなっていっている印象です。「こんなに看護師さんと話すとは思わなかった」といった反応をいただけたこともありました。

相談シートのメリット

相談シートを活用したことで患者さんが治療内容を変えたケースは、ぽつぽつあります。患者さんにとっては、今まで治療の選択肢がほとんどなかったため自分で治療を選択することなど考えるきっかけがなく、同じ治療がずっと続くと思っていた中で治療について考える機会が相談シートによってできたことは前向きに捉えてよいと思います。

医療者側にとっても、相談シートはメリットがあると感じます。私自身、相談シートを使うようになって患者さんについて先生とコミュニケーションを取る機会が増えました。例えば、「患者さんに治療に関する情報を自己判断で提供しましたけど、どうでしたか?」「いや、この患者さんにはこの治療法は合わない」「なんでですか?」「●●の理由で」「そうしたら患者さんに『この治療法は使えない』と伝えておいてください」といったやり取りがありました。患者さんの治療にどこまで影響するかは分かりませんが、少なくとも先生に患者さんは多様な希望をお持ちであることを理解してもらう、「この患者さんには■■の治療は合わない(合う)」などと考えてくれるきっかけにはなっています。また、相談シートで話した内容を基に先生が患者さんに説明したら、「言ったことがちゃんと先生に伝わった。意味があった」と信頼にもつながるでしょう。

治療に関する情報を持たない・情報を知らないことは、患者さんにとって最終的には損です。現状の治療に不満はなくても、後で知ったら「(新たな治療の選択肢があるなら)使いたかったな」とか「なんで言ってくれなかった」と負の感情を生む可能性があります。たとえ別の治療法が合わなくても、教えてくれたら「やれないのは残念だった」で終わるので。

相談シートを活用して主治医とコミュニケーションを

医療機関によっては、診療に携わる看護師さんが限られていて医師との橋渡し役になってもらえないこともありえます。もちろん、「(相談シートを)渡しておいてください」と看護師に依頼していただければ先生に届くとは思います。ただ、その後のフォローが期待できないことも想定して、自分から相談シートを先生に直接渡してコミュニケーションを取ってみましょう。

先生が相談シートの存在を知らない状態で患者さんが急に提出してきたら、「え?何それ?」と思う可能性は高いです。そういう反応を想定した上で、「こういうのを見つけたので書いてみたんですけど…」としっかり説明してみてください。反応が悪くてもやり取りを反省して改善点を見つけて、2回、3回と続けて患者さんから先生に認知させましょう。単純に手渡すのが厳しければ、先生から調子を尋ねられた時に、「実はちょっとメモしてきたんですけど…」と言って相談シートを使いながら説明してください。思ったことは言っておかないと損ですし、少なくとも診察の時間は自分のためにある時間だと思っていいです。変に気を遣う必要はありません。

患者さんの中には「実はあれも気になってたんです」と診察室を出てから再び戻ってこられる方がいますが、次の患者さんに影響を及ぼしてしまったりすることがあります。また、相談したいことをまとまりがなく話した場合、最初に聞いたことが忘れられたり、何が言いたかったか先生に伝わらなかったりするケースもあり得るでしょう。相談シートを活用してキュッとまとめられれば、一回の診察で話せるようになります。

自由記述欄の活用について

相談シートには日頃の悩み・疑問を自由に記入する欄があります。

患者さん目線で見ると何を書いてよいかわからず活用しにくいと思われるかもしれません。日頃は自分の症状・状態を振り返るメモがわりとして使い、チャンスがあれば先生にも共有するという意識でも大丈夫です。どうしても伝えたい内容であれば、見落とされないよう大きな文字で書くなど原始的な方法でアピールするのも良いかもしれません。

記事一覧に戻る
アイコン:リスト

相談シートに
症状を記録する