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第1回PNH患者さん・ご家族向けセミナー
~患者さんとご家族、
医療者の想いをひとつに~

アーカイブ記事(第1部)

概要

日時 2025年4月19日(土)14:00~16:30
開催形式 現地開催+オンライン
開催場所 旭化成ファーマ(現:旭化成セラピューティクス)本社 会議室
総合司会 慶應義塾大学医学部 血液内科 専任講師 櫻井 政寿 先生

プログラム

第1回PNH患者さん・ご家族向けセミナー 開催レポート①プログラム「1部:PNHとは」より

PNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)の患者さんやご家族、医療従事者が一緒に疾患について学び、情報を共有することを目的としたセミナー「第1回PNH患者さん・ご家族向けセミナー~患者さんとご家族、医療者の想いをひとつに~」を4月19日に開催しました。本コンテンツではPNH診療に携わる医師及び看護師による講演内容の一部を紹介します。

演者①:後藤 明彦 先生

演者①
後藤 明彦 先生

東京医科大学病院 血液内科 客員教授

演題:PNHを知り、治療を選ぶ ~より自分らしい生活を実現するために~

演者②:池上 明香 先生

演者②
池上 明香 先生

兵庫医科大学病院 看護師

演題:「大丈夫」は大丈夫じゃないかも?:相談シート活用で見えたPNH患者さんの困りごと

司会:櫻井 政寿 先生(慶應義塾大学医学部 血液内科 専任講師)

※本コンテンツは当日のプログラムをまとめるにあたり、司会・登壇者の発言内容が変わらない範囲での言い換え、発言の順番の入れ替えを行っております。

後藤先生 講演パート:PNHは補体介在性血管内溶血を主徴とする病気

後藤先生:難病情報センターのホームページの患者さん向けページには、「発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)とはどのような病気ですか?」という問いと「赤血球が血管内で非常に早く破壊されて起こる貧血である」1)という回答があり、これが肝(ポイント)になります。そのほか以下のことが記載されています。

  • 指定難病の医療受給者証の保持者(治療を受けている患者さん)は日本全国で1000人程度という、本当に稀な疾患1)
  • (どのような人に多いかという問いに)一定の傾向はない1)
  • PNHの原因はPIGA遺伝子の異常によるものですが、遺伝する病気ではなく、生まれた後で起こってくる異常1)
  • PNHには様々な症状が関係していることが分かっている1)

PNHの定義は日本の「発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版」で「補体介在性血管内溶血を主徴とする造血幹細胞疾患である」2)と記載されていることをよく知っていただきたいです。補体介在性血管内溶血を抑えることが、PNHの第1段階の治療の目標になります。

補体とその役割について

補体は血液の中の免疫機構に関わる一連のタンパク質で、異物や病原体が入ると活性化されて炎症や病原体の排除を促進します。特に、髄膜菌やインフルエンザ菌(B型)、あるいは肺炎球菌といったばい菌を覆う莢膜(きょうまく)に穴を開けるという、ばい菌を溶かす上で重要な働きを担っています。

補体はC1からC9までの種類があり、カスケード反応(連鎖反応)を起こしながら働き、その働きには3つの主要な役割があります。①ばい菌などが入ってくるとC3ができることで、C3bがふりかけのように働いて貪食細胞がばい菌を食べやすくします。②それから補体の活性化された分子(C5a、C3a、C4a)が白血球を局所に動員して免疫を活性化します。③最終的に膜侵襲複合体(C5bからC9までの複合体)が直接微生物の膜を破壊してやっつけます。

PNHで溶血がなぜ起こるのか

正常な補体のメカニズムは、別にばい菌だけを識別するわけではなく、血液中のどんな物体に対しても活性化されれば穴を開けてしまいます。では、なぜ普通の赤血球には穴が開かないのか。C5b-8という複合体ができ、C9が結合すると膜に穴を開ける膜侵襲複合体が形成されますが、それを防ぐために赤血球をはじめどの血球上にもCD59というタンパク質が存在しています。このCD59がC9の付着を妨げることで複合体ができず、穴が開かないわけです。

CD59はGPIアンカーというタンパクを介して細胞膜についていますが、PNH型の赤血球ではGPIアンカーがないためCD59がありません。するとC5b-8にC9までがくっついてしまい、赤血球に穴を開けるため血管内で溶血が起こります。

補体の活性化には3つの経路があります。古典経路とレクチン経路ではばい菌が入ってくるとさまざまなことが起こり、C3の活性化を経て最終的に膜侵襲複合体ができます。もう一つの第二経路は血液の中で常にC3のレベルまで軽く活性化されていています。実はこのC3レベルでも血球上にはCD55という物質があり、さらに活性化するのを防いでいます。ところがPNHの患者さんはCD55も持っていないため、(活性化を防げず)そのまま下流まで進行し、C5b-9の複合体が出て溶血が起こります。ですから、C3もしくはC5のレベルで活性化する流れをストップしてあげれば血管内溶血は止まるわけです。

PNHの3主徴

PNHの3主徴のうち、まず溶血については血管内溶血が起こるとヘモグロビンが尿の中に出てきて、色がついてきますが、それだけでなく様々な症状を来たします。次に血栓症ですが、バッド・キアリ(症候群)と言われる、肝臓で起こる珍しい血栓症を含む様々な血栓症を起こすリスクが高まります。3つ目は、人によってだいぶ違いますが、さまざまな程度で骨髄不全を合併しているのもPNHの特徴です。特に血管内溶血が起こることで腎不全や強い疲労感などいろいろ症状が出てきます。

PNHの患者さんでどんなことが命に関わってくるか見てみると、骨髄不全で血球が減っていくと、白血球の中でも好中球減少は重症感染症のリスクになります。血栓症も重要です。また日本のPNH患者さんにおいては腎不全を防ぐことも重要です。

PNHの治療

治療薬は長年ありませんでしたが(PNH発症の)メカニズムが明らかになり、(補体活性化経路で)最終的なC5を抑える治療薬ができました。C5を阻害して血管内溶血を抑えた場合にPNH患者さんの予後(寿命)がどうなるか調べたイギリスのデータから、骨髄不全を合併していない症例に限ると、ほぼほぼ病気のない人と同じような生命予後(普通の人と同じような生活が送れること)が示されました。それだけC5を阻害することが大事ということがわかります。

抗C5抗体の登場で、生命予後を左右する合併症がコントロールできるようになり、PNH患者さんの生命予後は非常に改善されました。投与間隔や投与方法が異なるものも登場したり、日本人特有のC5の遺伝子多型に効果のある抗C5抗体薬も出てきました。それでも貧血がうまく改善されない患者さんは血管外溶血を起こしている場合があり、C5より手前のC3レベルを抑える近位補体阻害薬が解決策の1つです。ただしC5阻害薬ほど長期使用の実績がないため、実際に生命予後の延長などに寄与してくれるかまだわからないところもあります。

それから胆石など他の病気になって手術が必要なケースでは現在行っている治療法が継続できないこともあるので、お医者さんとよく相談しておかなければなりません。また、いずれの抗補体療法も髄膜炎菌を中心とした感染症予防の重要性は変わりません。特に侵襲性髄膜炎菌感染症は生命の危険性が高いので注意が必要です。近位補体阻害薬に関しては、肺炎球菌やインフルエンザ菌(B型)に対するワクチン接種が求められるものがあります。

PNHの重症度分類について

「発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版」から、「溶血所見に基づいた重症度分類」という項目が変わりました2)。中等症もしくは重症に該当すると指定難病にかかる医療費の補助を受けることができ、中等症は溶血が血清LDH値で正常上限の3~5倍程度あるいは年に1~2回程度の溶血発作(肉眼的ヘモグロビン尿がみられる)が該当します2)。肉眼的ヘモグロビン尿に関しては受診時に確認できるとは限らないので、患者さんから「そういえばこんなワイン色の尿が前回の外来と今回の受診との間で出ました」などと申告していただければ、年に1~2回程度の条件に当てはまるかとどうか確認できます。重症は溶血の程度や発作の回数がそれ以上か、女性では妊娠すること自体が重症に相当し、抗補体療法がほぼ適用となります。指定難病にかかる医療費の補助を受けるための申請を早めにしておけば、適切なタイミングで治療が検討できます。

まとめ

PNHに対する抗補体療法は、患者さんが希望を伝えてその通りに決めるものではないですし、医者が「あなたはこれがいいのではないですか」と言って決めるものでもありません。まず患者さんの状態、それからライフスタイル、生涯にわたり治療を継続する可能性も踏まえて、どういう治療がいいか最適解を選んでいくことが必要です。言い換えれば、治療の選択肢が増えてきた中で1人1人の患者さんに合った治療を行うことが、要求される時代になってきたと言えると思います。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答

Q:主治医の先生と相談しながら診療を進めていくかと思いますが、普段の外来で患者さんあるいはご家族はどのようなことをお伝えすればいいでしょうか?

後藤先生:本当に思ったことを何でも言っていただきたいです。私から「変わりないですか?」と聞いてしまうと「変わりないです」と言われるので、「(診察までの間に)どんなことがありましたか」とか、具体的に「こんな症状なかったですか? あんな症状なかったですか?」といった、世間話みたいな感じで進めていくことが多いです。

1)難病情報センターホームページ|病気の解説(一般利用者向け)|発作性夜間ヘモグロビン尿症(指定難病62)|病気の解説(一般利用者向け)
2)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 特発性造血障害に関する調査研究班.発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド(令和4年度改訂版 責任 保仙 直毅).(PDF)(最終閲覧日:2025年12月8日)http://zoketsushogaihan.umin.jp/file/2022/Paroxysmal_nocturnal_hemoglobinuria2022.pdf

池上先生 講演パート:患者さんが言う「大丈夫」の真意

池上先生:(PNHを)専門で担当しておりませんが、当院(兵庫医科大学病院)で相談シートを活用した関わりをさせていただいているので、紹介します。

私たちが外来でよく見る風景を紹介します。まず先生が「調子いかがですか」「データ的には溶血ないですね」と話し、患者さんが「大丈夫です。変わりないです」と返し、先生が「じゃあ大丈夫ですね。また8週間後」とさらっと伝える感じで終わります。

ただ、患者さんが発する「大丈夫です。変わりないです」という言葉を聞くと、ちょっと気になります。なぜならこの「大丈夫です」は、あくまで患者さんの一部分だと思うのです。よくよく話を聞いてみると、「いつもしんどいのは変わらない。でも、いつもとは変わらないから『大丈夫です』(と返します)」であり、「とても元気で大丈夫です」とは違います。「大丈夫です」という言葉の中に、症状、仕事などの社会的な面、精神面などで患者さんが抱える多くのアンメットニーズ(潜在的ニーズ)が含まれていることを、関わる中で非常に感じています。 患者さんの「実は…」を引き出し、患者さんがよりよく生活できるようにすることが私たち看護師の役割だと思っています。

相談シートがコミュニケーションのツールに

私も本格的に関わり出したのはこの1年ぐらいで、それまでは診察が終わると点滴して「じゃあまた8週間後来てくださいね」と対応するだけでした。「大丈夫です」が気になるようになってからどう関わろうかと思った時、PNHのウェブサイト(PNH治療プラス)の相談シートを紹介いただいて「すごく使えるな」と思い、患者さんにお渡しして書いてもらっています。

相談シートでいいと感じたポイントは、自分で症状を振り返られ、症状の程度も分かりますし、「こういう症状もこの病気によるものだ」とご自身で気づける点です。継続してお話を聞いているので、以前と比較できるのもいいです。自由記載の欄には聞きたいことや伝えたいこと、あとは今後やりたいことを書けるのでご自身が書いたり、空欄の場合は私たち看護師が聞き取りしたりして記入しています。私たちからもう一声かけられる質問がすごくよく、患者さんと医療者間のコミュニケーションツールにも使えると思っています。

相談シートの情報を診察までに先生へ情報共有し、内容が気になる患者さんは診察時に同席させてもらったり、診察後に面談させていただいたりすることもあります。継続して関われるようお話した内容は看護記録に残し、シートもカルテに保存して見返せるようにしています。

シートから見える患者さんの状態や思い
集計結果(n=9)

当院には、シートを活用してもらっている治療中の患者さんが9名(男性6名、女性3名)います。皆さんの自覚症状を見てみると、勃起障害を除いた項目において半数以上が日常的に何かしらの症状を感じていることが分かりました。特にだるさ・疲労感に関しては9人中8人の方が「頻繁にある」もしくは「時々ある」と答えていました。

集計結果(n=9)

程度について半数の方が「軽い」と答えられていますが、一定の患者さんは中等度の症状を抱えて日常生活に支障が出ていることも、この集計で明らかになりました。

集計結果(n=9)

日頃の悩み・疑問を自由に記入する欄で「自分だけ勉強が遅れているようで焦る」と書いたのは17歳の患者さんで、「しんどくて授業を休んでまで受診とはならなくても、みんなが普通にできている勉強が自分にはしんどい。集中力が続かなく、できてないようで焦る」というお話をされていました。(スライド左側の)「もう少し体を動かしたいが、何かあったらと思うとできない」というコメントと少しリンクしていて、「なんかやりたいと思っていても体がついてこなくてできなくて、そんな自分がなんか駄目だな」と思ってしまう方が何人もいらっしゃいました。

医師以外の医療者もどんどん関わりを

繰り返しになりますが、患者さんに話をしっかり聞くと、常に何かしら不調があることに気づかされました。さらに言うと、(患者さんは)しんどくない状態が分かりません。私たちが「どうですか? しんどくないですか?」などと聞くと、「しんどくないってどういうことですか」と返され「確かにそうだな」「どうやって説明したらいいだろう」と思いました。今後治療法が増えてきたときに「これをしたらしんどさ・疲労感がなくなりますよ」と説明しても、恐らく患者さんには伝わりません。私たちの伝え方をより工夫する必要性を、患者さんからの返しから考えさせられています。

また、患者さんは現状維持を選ぶ傾向があると非常に感じています。次々に出る新しい治療薬に対して「どうですか」と伺うと、「先が見えない」「不安がある」「しんどいけどそんなに困ってない」「変わらないから今のままでいいです」と言われる方がいます。検査のデータやいつもの患者さんの話を聞いて「ちょっと変えた方がいいな」という場合は、話をしっかり詰めて一緒に相談していく方がいいと思っています。

今回、相談シートを使って患者さんとお話しするようになってから「看護師さんとこんな話したことなかったわ」とか、10年以上通われている方から「こんなこと聞かれたこと初めて」といった反応があり、「実はね…」と診察室で言えなかったことをポロっと言ってくれたりもしました。先生との関係ももちろん大事ですが、それ以外の医療者が関わることで、この先、この人にはこの相談というような、いろんな違う相談ができたら、もっともっと患者さんの困ったことなどを知れると思ったので、私たち看護師もどんどん入っていきたいです。

患者さんからもコミュニケーションを

最後に皆さんに伝えたいこととして、自分の症状が本当に病気かなとか、今しんどいなとか、といった自分の感情と向き合っていただき、(そこから得たものを)何でもいいので医療者に伝えてもらえると、より患者さんを知ることができるので嬉しいです。そして、どんどん医療者とコミュニケーションを取ってほしいです。診察室に入ると先生に気を使って「忙しそうだから、ちょっと今日はこれやめとこう」となったり、診察が混んでいたら「周りの患者さんも待っているし、早く終わらせよう」、あとは診察室に入って先生にいいとこ見せたいから「本当はしんどいけど、しんどくないって言っちゃった」ということを廊下で聞いたりもします。「先生に言えなくてもこの人にだったら言えるかな」という相手を見つけてもらいたいですし、医療者誰にでも言える環境を私たちも作れたらすごく素敵だと感じています。やはり患者さん自身が主役ですので、私たちをパートナーと思ってどんな相談でもいいです。どんな話でもそこから広がっていくので、話をしていただけたら嬉しいです。皆さんがもっとよりよく自分らしく過ごせることを私たちも協力できたらいいなと思っています。

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共催:PNH倶楽部、旭化成ファーマ株式会社(現:旭化成セラピューティクス株式会社)、Sobi Japan株式会社

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