第1回PNH患者さん・ご家族向けセミナー
~患者さんとご家族、
医療者の想いをひとつに~
アーカイブ記事(第2部)
概要
| 日時 | 2025年4月19日(土)14:00~16:30 |
|---|---|
| 開催形式 | 現地開催+オンライン |
| 開催場所 | 旭化成ファーマ(現:旭化成セラピューティクス)本社 会議室 |
| 総合司会 | 慶應義塾大学医学部 血液内科 専任講師 櫻井 政寿 先生 |
プログラム
第1回PNH患者さん・ご家族向けセミナー 開催レポート② プログラム「2部:PNHとともに」より
PNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)の患者さんやご家族、医療従事者が一緒に疾患について学び、情報を共有することを目的としたセミナー「第1回PNH患者さん・ご家族向けセミナー~患者さんとご家族、医療者の想いをひとつに~」を4月19日に開催しました。本コンテンツでは医師/看護師から複数の患者さんにインタビュー形式でPNH診療のご経験をお話頂いたプログラム「2部:PNHとともに」の内容をまとめました。
※当日のプログラムをまとめるにあたり、司会・登壇者の発言内容が変わらない範囲での言い換え、発言の順番の入れ替え等を行っております。また、登壇された患者さんのお名前は仮名です。
司会
後藤 明彦 先生
東京医科大学病院 血液内科 客員教授
池上 明香 先生
兵庫医科大学病院 看護師
登壇者
藤井さん(仮名)
PNH患者会「PNH倶楽部」役員。19歳で再生不良性貧血と診断され、24歳でPNHに移行。2011年から治療薬を開始し、現在は2か月に1度通院している。
岩田さん(仮名)
「PNH俱楽部」役員。PNHと診断されてから27年目。現在は大きな病院の血液内科に通院している。
患者会「PNH倶楽部」誕生と活動について
後藤先生:「PNH倶楽部」設立のきっかけや、現在の会員数について教えてください。
岩田さん:
❝ゆたかさん❞という患者さんが開設していたホームページを通じて代表の村上さんと私とゆたかさんの3人で会うことになり、食事しながら自分の症状について話したのがきっかけだったと思います。会の名前も、3人で「ちょっと楽しい感じにしたいね。倶楽部って漢字にしたらいいじゃない」と仮として付けたものをそのまま使っています。(3人で食事して以降)インターネット経由で藤井さんら患者さんがどんどん集まっていきました。
PNH倶楽部は、新しい治療薬の登場を機に「PNHを特定疾患(現在の指定難病)として認めてもらうために活動しよう」と2011年にNPO法人としてスタートしました。現在は20歳代から80歳代まで、幅広い年齢の男女あわせて約100名の患者さんが登録されています。
後藤先生:
(インターネットを通じて)最初3人がたまたま「お話ししましょうか」と始まったということ、現代的ですね。昔だとそのようなケースはありませんでした。
PNH倶楽部ができて14年になりますが、PNHを指定難病として認めてもらうことが最大のトピックスでしたか?
岩田さん: はい。血液疾患の患者会として大先輩の「再生つばさの会」の方たちと一緒に、厚生労働省へ行って陳情したり議員にお願いしに行ったりしました。難病の法律(難病の患者に対する医療等に関する法律)が後々(2016年に)成立するわけですが、すごく大きな達成感を得られましたし大きな仕事になりました。
後藤先生: 現在はどのような活動をされていますか。
藤井さん: 対面での集まりを年に2回行っていて、顧問の先生による医療講演や個別相談会を開いています。 オンラインでも年に2回ほど実施しており、外出が難しい方や遠方の方も参加しやすくなっています。昨年からは公式LINEも開設し、イベントの案内やお知らせなども発信しています。さらに年に3~4回、活動報告など最新情報をまとめた会報誌を会員の皆様に発行しています。
PNHとの向き合い方について
後藤先生: PNHは本当に経過も長い病気ですから、病気と向かい合っていく中で良い時はありつつ、辛い時や気持ちが高まらない時の方が多かったのかもしれません。どのようにして乗り越えてきましたか?
藤井さん: 2つあって、1つはPNH倶楽部を通じて出会った友人たちです。同じ病気を抱えたからこそ気持ちを理解してくれたり、相談に乗ってもらえたりするのはとてもありがたいです。もう1つ、飼っている犬との時間がかけがえのないものとなっています。以前は朝がすごく苦手でしたが、散歩を通じて朝も苦手じゃなくなりました。歩く距離も伸びてきて、少し体力もついたと思っています。
岩田さん: 私も辛い時はPNH倶楽部で出会った友人たちと「今日はこういう症状があった」など悩みについて話すことがあり、それが心の支えになっています。あと猫を4匹飼っていて、彼らとの日頃の生活がとても癒され、楽しく過ごせるようになっています。他には、体調の良い時を狙って学生時代からやっているドラムでストレスを発散したりしています。
後藤先生: すごく素晴らしいですね。生活が変わった中でできるようになったことも教えていただきました。そのほか追加でコメントいかがですか?
藤井さん: 治療法を変える前は(治療していても)疲労感がかなりひどかったです。それと比べ今は日常生活を普通に送ることができ、ありがたいと思っています。
岩田さん: 私は治療法を変えてヘモグロビン(の数値)もちょっと上がったので、いろんなことができるようになりました。その1つが乗馬です。あと、昔は駅の階段を一気に上がることがなかなかできませんでした。村上もよく言っていましたが、踊り場で必ず一回休んでまた頂上を目指すみたいな(感覚です)。それが今は短い階段に限れば、楽に一気に上がれるようになりました。また以前は治療法によって経済的な負担がかなりありましたが、現在は治療法も変わり(指定難病患者への医療費助成制度によって)補助もあるのでだいぶ楽になっています。
後藤先生:
体調面だけでなく、経済的な面にも変化があることは大事です。階段の昇り降りや坂道などでの様子は、私が患者さんに状態を聞くときに一番聞きやすい日常的なシチュエーションです。
治療薬によるヘモグロビンの回復は(患者さんで)だいぶ違っていて、非常にゆっくりの人が多いですし、十分でない人も確かにいらっしゃいます。岩田さんみたいに活動性が高い人はヘモグロビンが高くないとダメだと思いますし、家の中で過ごす(ことが多い)という人は無理に「ヘモグロビンを12 (g/dL)にしなきゃいけない」と思わないことです。どう治療していくのか、お互いによく理解することが大事と捉えています。
PNHでしんどいこと・困っていること
池上先生:
ヘモグロビンに関して貧血の方は(数値が)低い状態に慣れてくるので、10程度でも「全然(問題なく)元気です」という人もいます。生活の活動量などを見て治療をどうするか、どんどん相談すると良いと私も思います。
治療を受けていてもしんどいこと、生活で何かお困りのことや不便さがあれば教えていただきたいです。
藤井さん:
普段ヘモグロビンは10程度で落ち着いていますが、コロナにかかったり高熱が出たりするとかなりひどい溶血発作が起きてヘモグロビンも7ぐらいまで落ち、元に戻るのにとても時間がかかります。やはり感染症は私の中で一番気にしているところです。
また、そういう状態でどうしても電車で移動しなければいけない時には「エレベーターの位置はどこにあるのか」「なるべく電車を使わないでいく方法はないか」といったことを気にしていました。
岩田さん: 私は常に倦怠感があり、朝の血圧がすごく低いせいかなかなかエンジンがかからず、お昼ごろにやっとエンジンがかかるような感じです。倦怠感を持ちながら家事をいろいろしたりするのが、ちょっとしんどいです。健康な人と同じように動けないのは分かっているのだけど、「自分は怠け者ではないか」などと感じてしまう患者さんはいると思います。
池上先生:
藤井さんや岩田さんと同じ思いの患者さんは本当にいらっしゃいます。「動けないのは自分にやる気がないせいですよね」と言われた方には「やる気でできたら、みんなやっていますよ」「(やる気で)できないから病気の症状の1つなのですよ」と説明してやっと「あっ、そうなんだ」と。しんどさがあることはどんどん言ってもらいたいです。
PNH俱楽部の会員の方向けのアンケートの中でも困りごとについて質問されていますが、皆さんからどのような答えが返ってきましたか。
岩田さん: 「日々の生活の中で困りごとはありますか?」という質問では、「あるけど我慢している」「我慢できているので、困りごとまでは感じていない」と回答された方が6割、「ある」との回答が2割強でした。やはり、多くの患者さんは何らか症状を抱えながら我慢して生活されていることがうかがえます。
藤井さん: 体調に関して特徴的なことを尋ねると、「風邪をひくなど体調を崩しやすくなった」「体調が悪くなると肌や目に黄疸が出て、体調不良が外見に現れる」という声がありました。
PNHを発症している中で楽しむ工夫について
池上先生: (これまでの話で)生活している中かなり楽しまれている印象を伺ってきましたが、お2人とも楽しむために工夫していることがあれば教えていただきたいです。
藤井さん:
「楽しむことを常に頭に入れよう」となったきっかけがあります。私は19歳から24歳まで長期入院していました。21歳で退院できた時に体を大切にするあまりに、体調が良いのに部屋から出ない生活を送っていました。10カ月後に再発して入院することになり、すごく悪くなってもう危ないのではと思った時に「どうして10ヶ月間なにもしなかったのだろう」とものすごく後悔し、「次元気になったら息をしているだけではなく、自分らしく生きる」と本当に思いました。24歳で大学病院に転院し、当時まだ認可されていなかった治療によって元気になって退院し、その後PNHに移行しました。
生きている実感は人それぞれでしょうが、私の場合はいろいろな楽しみを見つけて過ごしています。
池上先生: 本来であれば外でたくさん遊びたい時に息をするだけの生活という、大変な経験をされたのですね。岩田さんはいかがですか?
岩田さん: 1つは同じ地域に住むPNHの友人とランチをしながら近況報告をしています。あとは隣の県に住む友達がわざわざこちらまで出てきてくれたりとか、こちらが向こうに行ったりとか、そういう形でお互い近況や体調の報告をしています。ストレス解消として、先ほどお話しした乗馬や美味しいものを食べることも大事にしています。もう1つは先ほどお話ししたドラムですかね。
池上先生: 自分らしく生きるとか、やりたいことをやるのは非常に難しいことだと思います。それを実現して本当にキラキラしていて良いですね。ストレスを溜めないようにするにはどうすれば良いでしょうか。
藤井さん: 自分の好きなことに没頭することですね。ストレスを完全になくすことは難しいですが、好きなことをしたり没頭できることがあれば、自分なりにうまく付き合っていけると思っています。
池上先生:
没頭するほど好きなことがあるって、すごいです。ただ、好きなものを見つけられていない人が「好きなこと見つけなくちゃ」と考えると逆にストレスになるので、お風呂に入ることや1人で本を読むのが好きだったら、その時間を作るとかで(良い)。
家族を優先して自分のことを置き去りにしてしまう方も多くいるでしょう。そこでも自分がホッとできる時間を作れると非常に良いと感じました。
自分の症状を医師に相談するためのアドバイス
後藤先生: これまでのお話から、どのような人に相談されているか分かってきました。PNH俱楽部のアンケートで、他の患者さんたちはどのような形で相談されていましたか。
藤井さん:
アンケートでは78%の人が「主治医」と答えていて圧倒的に多く、次いで「PNH俱楽部の仲間」でした。
私自身長く病気で向き合ったことで、先生と診療の時も自分の体調についてうまく話せるようになってきたのかなと。一番聞きたいことを簡潔に伝えるようにして、うまく伝えられなかったら次の診療に改めて話すようにしています。遠慮しすぎず、自分の体調や気になることをしっかり伝えることが大切だと思います。
後藤先生: 初めて受診する患者さんへのアドバイスは何かありますか?
藤井さん: PNHについて学ぶことはとても難しく、発病して間もない人にはなかなか理解できないと思うので、一番自分が辛いこと・聞きたいことを話すのが良いと思います。つい思いつくままに話してしまいがちなので、要点を整理して伝えられるのがいいのかもしれません。
岩田さん: 私は主治医の先生に会う前の日頃までに、例えば「ちょっと尿の色が濃かった」とか「この日はお腹を壊した」とか「しんどさがいつもよりひどかった」といった受診日までの体調を詳しく先生に伝えられるよう、スマホのカレンダーなどにメモして先生に必ず相談するようにしています。
PNHに関する今後の取り組み等について
池上先生: PPI(Patient and Public Involvement、患者・市民参画)という、患者さんや市民の経験・意見を積極的に取り入れて一緒に医療をより良くしていく今回のイベントのような取り組みが最近盛んにされつつあります。藤井さん自身の経験やそこから得られたものがあれば、何か教えていただきたいです。
藤井さん: PNH治療プラスの公式LINEの作成にかかわらせていただく中で、患者の声が反映されたことがとてもありがたく思っています。最新情報や相談シートはとても役に立っていますし、病気だけではなく患者の気持ちに寄り添った取り組みがなされていることが印象的でした。こうした取り組みが患者にとって心強い支えとなることを感じています。今後も患者の声が反映されることが大切だなと思いました。
後藤先生: PNH俱楽部に入会されていない患者さんにどんなメリットがあるか、簡単に教えていただけますか。
藤井さん: PNH俱楽部は病気と共に生きる患者さんやご家族をサポートするための会です。 病気であっても自分らしく毎日を過ごせるよう、情報や交流の場を提供しています。困った時には顧問の先生に正確な情報を聞ける機会もあり、安心につながります。関心を持たれたらぜひ入会を検討してみてください。
後藤先生: こういう機会はなかなかない中、非常に貴重なお話を伺いました。本当に藤井さん、岩田さん、それから池上先生もありがとうございました。
共催:PNH倶楽部、旭化成ファーマ株式会社(現:旭化成セラピューティクス株式会社)、Sobi Japan株式会社